2025年7月11日公開。PCゲーマーや自作PC愛好者にとって衝撃的な事件が発生しました。比較的ミドルレンジで「安全圏」とされていたNVIDIAのGPU「RTX 4060 Ti」が、なんと発火・溶解したという報告が寄せられたのです。
今回は、韓国の大手PCフォーラム「Quasar Zone」に投稿されたこの事件をもとに、事の詳細、考えうる原因、そして私たちができる対策について徹底的に掘り下げていきます。
このニュースは、RTX 4090や5080といった上位GPUの電源トラブルが話題になる中、「まさか下位モデルでも…?」という不安を持つすべてのユーザーにとって、無視できない内容です。
- 発火事故の発端:何が起きたのか?
- 一般的な「メルト問題」とは異なる兆候
- 推測される原因:製造ミスか?過剰トルクか?
- ユーザの声:本当に安全なGPUなど存在するのか?
- メーカーの対応と今後の見通し
- なぜ“中級モデル”のGPUでも発火するのか?
- 「GPUは取り扱いが命」──知られざるユーザー責任
- ユーザーの声:本当にEmTekだけの問題なのか?
- 製品保証と賠償:GPUが燃えた時の“補償範囲”とは?
- ユーザーの声:事故が起きたあとの「リアルな不安」
- GPUトラブルの再発防止策──今できる“現実的な備え”とは?
- ユーザーの声:対応次第で信頼は取り戻せる?
- 同様のトラブルとの比較──「またか」の印象が拭えない
- 今後、どのGPUを選ぶべきか?信頼性を見極めるポイント
- 終わりに──“当たり前”を疑う力が、PCユーザーを守る
発火事故の発端:何が起きたのか?
まず、問題となったGPUは「EmTek StormX Dual RTX 4060 Ti」というモデルでした。韓国のユーザーがQuasar Zoneに投稿した内容によれば、特に過度な負荷はかけておらず、使用中の最も重い作業は「PUBG」のプレイだったとのこと。つまり、通常のゲーム用途で突然PCがシャットダウンし、再起動後には煙が立ちのぼり、最終的には発火したというのです。
🔴 最も衝撃的なのは、このGPUが発売から2年後の通常使用中に突如として発火した点です。
ユーザーはGPUを分解し、溶解したバックプレート部分や、PCIeスロット周辺の焼損跡を公開しています。驚くべきことに、電源ケーブルや12VHPWRコネクタ自体には異常は見られなかったのです。
一般的な「メルト問題」とは異なる兆候
RTX 4090などで広く知られる「メルト問題」では、12VHPWR電源コネクタの不完全な挿入や設計ミスによる過熱が主な原因とされてきました。しかし、今回の4060 Tiに関しては、そのような構造的な脆弱点は見当たりませんでした。
それにも関わらず、次のような異常が報告されています。
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GPU背面のPCIeスロット近辺が著しく焦げていた
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PCB(プリント基板)上部にまで熱損傷が拡大していた
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電源ラインやコネクタではなく「ネジ穴」付近から異常加熱が始まっていた
このような点から、単なる電源過負荷ではなく、より局所的で構造的な問題が疑われています。
推測される原因:製造ミスか?過剰トルクか?
ユーザー本人やフォーラムのコメントからは、以下のような仮説が浮かび上がっています。
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🔧 ネジの締めすぎによって、PCBが微細に歪み、微小な短絡を起こした可能性
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🧰 一部で報告されている製造時の実装不良(リフロー不良や接触不良)による異常加熱
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🖥️ 数ヶ月前にマザーボードを「中古品」または「再整備品」と交換していたため、電気的な相性や接点の問題も否定できない
⚠️ ただし、ユーザーと複数のコメントは「マザーボード起因ではない」と結論付けています。PCIeスロットの焼損はあくまで結果であり、問題の発端はGPU側であるという見解が大勢を占めているのです。
ユーザの声:本当に安全なGPUなど存在するのか?
さて、ここでQuasar Zone内の他ユーザーの反応をいくつか取り上げましょう。
ユーザーA:
「4060 Tiなんて全然高負荷GPUじゃないのに…この個体だけの問題であってほしい。」
ユーザーB:
「EmTekって韓国では比較的信頼されてるブランドだよ。これはリコール級かもしれない。」
ユーザーC:
「ネジのトルクが原因って本当?でもそんなことで燃えるのは、そもそも設計に余裕がなさすぎる気がする。」
🔴 つまり、ミドルクラスでさえ“絶対安全”という神話は崩れつつあるのです。
メーカーの対応と今後の見通し
現時点(2025年7月12日)でEmTekからの公式発表は出ていません。ただ、当該ユーザーは修理業者を通じて保証対象か否かの確認を依頼しているとのことです。
これに関して、他のコメントでは以下のような意見が見られました。
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EmTekはこれまでにいくつかの無償修理・交換事例があり、誠実な対応を期待できる
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韓国国内の保証ポリシー上、2年以内の製品に対しては「物理的破損」であっても検査後に無償対応される可能性が高い
ただし今回は発火を伴う事故であり、仮にユーザー起因でなかったとしても、マザーボードやケースまで巻き込む被害があるため、損害賠償請求レベルに発展するかもしれません。
なぜ“中級モデル”のGPUでも発火するのか?
次に掘り下げるべきなのは、「なぜRTX 4060 Tiのような中級モデルでも溶解・発火に至ったのか」という点です。多くのユーザーが「高性能モデルほど高熱・高消費電力でリスクがある」と思い込んでいることでしょう。実際、RTX 4090や5080のようなフラッグシップモデルで12VHPWRコネクタ問題が多発していたのも事実です。
しかし、この4060 Tiのケースでは、電力面での余裕があるはずのモデルでありながら火災事故が起きてしまった。これは、単に“消費電力の問題”に還元できない次元の話なのです。
🔴 問題の本質は「物理構造の脆弱性」と「製造工程の個体差」にあります。
GPUのPCB(プリント回路基板)は、複雑かつ高密度な配線が施されており、設計段階での誤差や製造過程の圧着・はんだ不良が致命的なトラブルにつながります。とりわけ、今回のように「ネジ付近」から焦げが始まっているケースでは、次のような原因が疑われます。
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バックプレートのねじ穴周辺で金属と基板が接触し、熱が集中した
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取り付け時のトルク過多によりPCBに微細な“反り”が発生し、内部短絡を起こした
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基板に施された絶縁コーティングが不完全で、湿度やホコリでリーク電流が発生した
これらは設計者でも見逃しやすいトラブルであり、しかも使用初期では問題が出ず、「数年経ってから発火する」という厄介な性質を持っています。
「GPUは取り扱いが命」──知られざるユーザー責任
では、ユーザーはこのような事故を完全に避けることができるのでしょうか? 残念ながら、絶対的な予防法はありません。しかし「ユーザー側でできる予防策」があるのも事実です。
ここで重要になるのが、“取り付け時の物理的な圧力管理”です。
例えば、GPUをケースに固定する際、ネジを強く締めすぎたり、斜めに押し込んだりすると、基板にストレスがかかります。とくに小型モデルやMini-ITXケースに搭載する場合、この影響は無視できません。RTX 4060 Tiはデュアルファンで比較的コンパクトですが、それでも重さは500gを超えます。バックプレートやPCIeスロットがその重さに負担を感じれば、長期的には基板にひずみが生じる可能性があるのです。
🔧 GPUを固定する際は、左右バランスをとって、過度な締め付けを避ける
🧹 ホコリや湿気が内部に侵入しないよう、定期的な清掃を行う
🔍 特に中古マザーボードや修理履歴のあるパーツは、接点の状態を注意深く確認する
こうした“当たり前の注意”を怠ると、思わぬ形で「自己責任」が問われかねません。
ユーザーの声:本当にEmTekだけの問題なのか?
再び、Quasar Zoneに寄せられたユーザーたちの声を見てみましょう。
ユーザーD:
「他のブランドでも似た事例はあったのかな?EmTekだけの問題じゃなければ、かなり怖い。」
ユーザーE:
「自作PC界隈では“取り付けミスは自分の責任”とされがちだけど、これだけ焦げてたら設計不良の疑いもあるよね。」
ユーザーF:
「俺の友達も去年、同じ型番のGPUで煙が出たって言ってた。これは偶然じゃないかも。」
🔴 つまり、これは「1件限りの事故」で済ませられないかもしれない事例なのです。
実際、過去にはNVIDIA RTX 4090/5080/5090の上位モデルにおいて、12VHPWR電源コネクタが発熱・発火するトラブルが相次いで報告されており、Der8auer氏やThermal Grizzlyなども分析動画を投稿しています。今回の件では電源コネクタに異常はなかったとはいえ、「物理的負荷が火種になる」という点では、同じ本質的問題を抱えているとも言えるでしょう。
製品保証と賠償:GPUが燃えた時の“補償範囲”とは?
では、仮に自分のGPUが同様のトラブルで発火してしまった場合、どこまで保証されるのでしょうか?これにはメーカーごとの保証ポリシーが強く関係してきます。
EmTekは韓国市場で信頼されているブランドのひとつですが、基本的な製品保証は「2年間」が目安。今回の事故は発売からちょうど2年のタイミングで発生しており、ギリギリ保証対象となる可能性があります。
ただし、焦点となるのは「発火によってPCケース、マザーボード、電源など他の部品にも損害が及んだ場合の補償」です。これは通常の製品保証ではカバーされず、次のような条件が求められることが多いです。
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🔍 製品自体の欠陥が原因と認定された場合のみ、損害賠償の対象となる
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🛠️ サードパーティ製のケースや電源など、他社製品に及んだ損害は一部除外されることもある
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🧾 正規販売代理店を通じて購入していたかどうかが保証適用の鍵になる
このように、保証が適用されるかどうかは非常に複雑な判断になります。そのため、事故が発生した場合は「分解せずに」まずサポート窓口に連絡し、現物を確認してもらうことが重要です。
ユーザーの声:事故が起きたあとの「リアルな不安」
最後に、発火事故後に多くのユーザーが感じた“リアルな心情”を紹介して中盤を締めくくります。
ユーザーG:
「保証は効くかもしれないけど、PCが燃えたトラウマの方が大きい…」
ユーザーH:
「次は絶対にバックアップを取っておこうと思った。SSDも熱で死んだ。」
ユーザーI:
「もう自作じゃなくて、メーカー製PCを買った方が安心かもしれない。」
このように、物理的損害よりも「精神的ショック」や「作業環境の損失」によって、ユーザーの生活や仕事にまで影響が出ることがあるのです。
GPUトラブルの再発防止策──今できる“現実的な備え”とは?
ここからは、「自分のGPUが発火しないように、今できることは何か?」という視点で具体的な対策を考えていきましょう。
まず大前提として、どれほど信頼されたブランドであっても、ハードウェアには“個体差”と“設計の限界”が存在します。 そして、その多くは使い始めてから時間が経って初めて顕在化することが多いのです。
そのため、再発防止の鍵は「異常の早期発見」と「トラブルが起きても被害を最小限に抑える環境づくり」にあります。
🔴 最優先すべきは“モニタリング”と“冷却管理”です。
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GPUの温度監視を怠らない。HWMonitorやAfterburnerなどの無料ツールで十分です。
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ファンカーブ(回転速度)を最適化し、熱がこもらないように調整する。
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ケース内のエアフローを改善するため、ケーブル配置を整理し、定期的にホコリを除去する。
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電源ケーブルやコネクタ周辺に過度な圧力がかかっていないか確認する。
これらはすぐにでも取り組める対策であり、何より**“事故が起きてから後悔しないため”に、今日からでも始めるべきこと**なのです。
ユーザーの声:対応次第で信頼は取り戻せる?
事故の発生後、多くのユーザーがEmTekの対応に注目しています。ブランドへの信頼は、製品そのものだけでなく、「問題発生時の姿勢」によって大きく左右されるからです。
ユーザーJ:
「EmTekが正式にリコール対応してくれれば、まだ信用できるかもしれない。」
ユーザーK:
「問い合わせにすぐ返信が来た。修理費が有償でもいいから、交換対応してほしい。」
ユーザーL:
「むしろ、これをきっかけに“安全性重視”の製品を出してくれるなら、次も買いたいと思える。」
🔴 つまり、ユーザーは“完璧な製品”を求めているわけではなく、“誠実な対応”を求めているのです。
実際、NVIDIAやASUS、MSIといった大手ブランドも過去に類似トラブルを経験しており、その際の対応力がブランドイメージの分かれ目となりました。EmTekにも、今回の件を“品質管理の改善機会”と捉え、明確な説明と対応策の提示が期待されています。
同様のトラブルとの比較──「またか」の印象が拭えない
RTX 4060 Tiの件が注目を集める背景には、直近で立て続けに発生しているGPU関連の発熱・発火問題があります。
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2025年2月:RTX 5090で電源コネクタが溶解。設計ミスによる過電流が原因と報道。
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2025年4月:RTX 5070で電源ケーブルの接触不良が発覚。リビジョンBで設計変更。
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2025年5月:著名YouTuber「Der8auer」が12VHPWRの接点トラブルを公開。
これらと比べると、今回のケースでは「電源まわりに異常がない」のが逆に異質でした。原因は今も確定しておらず、ユーザー起因なのか製品不良なのか、明確な判断が下せない状況です。
⚠️ この“不確実さ”こそが、ユーザーにとって最も不安を掻き立てる要素なのです。
今後、どのGPUを選ぶべきか?信頼性を見極めるポイント
事故を受けて、「次はどのGPUを選ぶべきか」と迷う人も多いでしょう。ここでは、信頼できるGPUを見極めるための視点を紹介します。
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発売から少なくとも半年が経ち、初期ロットのトラブル報告が落ち着いているか
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物理的な設計(基板構造、冷却システム、バックプレートの固定構造)に無理がないか
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同型番で複数のメーカーが展開している場合、海外フォーラムやレビューでの評価が安定しているか
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修理体制や国内サポートの有無。万一の事故時の対応力があるか
特に、AmazonレビューやYouTubeのベンチマークだけでなく、**RedditやQuasar Zoneのような“技術寄りの実体験が集まる場”**の情報は信頼性が高く、実際の使用感に基づいた評価が参考になります。
終わりに──“当たり前”を疑う力が、PCユーザーを守る
今回のRTX 4060 Tiの発火事故は、単なる「個体不良」の域を超えて、多くのPCユーザーに「自作のリスクと責任」を問いかけるものとなりました。
🔴 たとえ“中価格帯”“低消費電力”であっても、ハードウェアに絶対の安全はない──この現実を、私たちは正しく受け止める必要があります。
そして、ただ怖がるのではなく、以下のような意識を持つことで、より安全で快適なPCライフを送ることができるはずです。
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日々の使用環境や取り付け方法を見直す
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温度や消費電力などをモニタリングし、異常を早期に察知する
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ブランドを“価格”ではなく“信頼”で選ぶ
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問題が起きたときは冷静に情報を集め、速やかに対応する
不具合が起きるたびに騒ぎになるのではなく、「次の事故を防ぐための知識」を共有し、技術と信頼を積み重ねていくことが、今後のPC業界とユーザーの未来をつくるのです。