Windows 11 24H2更新KB5063878、SSD不具合の疑惑は誤報 原因と検証結果を整理

2025年9月2日公開。Windows 11 24H2向けの累積セキュリティ更新プログラム「KB5063878」をめぐり、「SSDが破損する」「大容量データ転送でエラーが発生する」といった深刻な報告が日本を中心に相次いでいました。しかしその後、MicrosoftとSSDメーカーPhison（ファイソン）の大規模検証により、アップデートが直接の原因ではなかったことが確認されました。本記事では、エラー疑惑の経緯、公式調査結果、そしてユーザーが今後取るべき対応について詳しく解説します。

問題が報告された経緯

2025年8月12日に配信された「KB5063878」適用後、一部ユーザーから「SSDでデータ転送中に再現性のあるエラーが発生し、データが失われた」という報告がX（旧Twitter）や日本の掲示板で拡散されました。特にPhison製NANDコントローラー搭載SSDが不具合に弱いのではないかとする噂が広まり、多くの利用者が更新を避ける動きを見せました。

この報道を受け、Microsoftは直ちに調査を開始し、フォーラムで追加情報を呼びかけました。その際には「もし不具合が確認されれば、修正版を配布する」との姿勢を示していました。

PhisonとMicrosoftの大規模検証

Phisonは8月18日に状況を把握し、報告対象となったSSDに対して合計4,500時間以上の検証試験を実施しました。2,200回を超えるテストサイクルの中で、不具合は一度も再現されず、パートナー企業や顧客からも同様の報告は確認できなかったとしています。

一方、Microsoftも独自にテストを実施し、最新システム環境ではエラーが再現できなかったと結論づけました。さらにユーザーから詳細なログを収集したものの、アップデートとSSD障害との関連性を示す証拠は得られなかったとのことです。

Bleeping Computerが入手した内部メンテナンスノートでも、「KB5063878とSSD/HDDの障害には直接的な関連はない」と明記されています。

ユーザー側の環境要因の可能性

今回の検証結果から、問題はWindows更新プログラムそのものではなく、特定の環境依存要因であった可能性が高いとみられます。例えば、古いSSDファームウェア、BIOS設定、ストレージドライバーの不整合などが考えられます。実際に過去の事例でも、「特定メーカーの古いコントローラーと新しいWindows更新の組み合わせでエラーが発生した」ケースは複数確認されています。

そのため、SSDメーカーが推奨する最新のファームウェアとドライバーを維持することが、今後のトラブル回避につながると専門家は指摘しています。

他ユーザーの反応と報告事例

海外フォーラムでは「更新後にSSDが壊れたと思ったが、実際にはケーブル不良だった」という報告や、「KB5063878をアンインストールしても不具合は続いた」という事例が寄せられています。これらの声も、MicrosoftとPhisonの結論を裏付ける形となっています。

ただし一部のユーザーは「偶然タイミングが重なっただけでは？」と疑問を残しており、完全に不安が払拭されたとは言い切れません。

過去の類似不具合との比較

今回の「KB5063878 SSD問題疑惑」は、過去のWindowsアップデート騒動を思い起こさせます。例えば2020年のWindows 10更新では、一部の環境でNVMe SSDの速度低下が確認され、Microsoftが数週間後に修正版を配布した事例がありました。また、2023年にはWindows 11の更新によって特定メーカーのSSDの寿命を縮める可能性が指摘され、最終的にはファームウェアの更新で解決した経緯もあります。

これらと比べると、今回のケースはユーザー報告が早期に拡散したものの、検証では関連性が否定された点が特徴的です。情報の拡散スピードが格段に上がった現代において、誤解や不安が先行する傾向がより顕著になっています。

Microsoftの調査で見えた課題

MicrosoftとPhisonが数千時間に及ぶ検証を行ったことは評価できますが、同時に以下の課題も浮かび上がりました。

まず、初期の報告を受けた段階で公式に明確な声明を出すまでに時間がかかったことです。この空白期間にSNSで不安が増幅され、多くのユーザーが更新を停止したり、独自に危険情報を拡散してしまいました。

また、今回のように「不具合が再現できない」場合でも、ユーザーが納得できる形で技術的な説明を提示しなければ、疑念は残ります。特にストレージのデータ損失に関わる問題は、利用者にとって最も不安を感じる領域であり、Microsoftが今後さらに透明性を高める必要があるでしょう。

一般ユーザーが取るべきアップデート管理

では、実際に私たちユーザーはどのようにWindowsの更新と付き合うべきでしょうか。

まず第一に、システム更新の前には必ずバックアップを取ることが推奨されます。外付けHDDやクラウドストレージを利用し、大切なデータを複製しておくことで、万が一の際の被害を最小限にできます。

次に、SSDやマザーボードのファームウェアを最新に保つことも重要です。更新によりOSとの互換性が改善されるケースは多く、今回のような誤解を招く現象を防ぐ効果が期待できます。

さらに、更新後に不具合が疑われる場合は、イベントビューアーやSMART情報を確認し、ハードウェア由来かソフトウェア由来かを切り分ける習慣を持つとよいでしょう。誤った判断でアップデートをアンインストールすると、セキュリティリスクが高まる可能性もあるためです。

読者フォーラム：あなたはどう感じましたか？

今回の「SSD問題疑惑」は、結論としては誤報に近いものでしたが、多くのユーザーが一時的に不安に駆られました。

「自分も更新後に動作が不安定になった」という声や、「実はSSDの寿命やケーブル劣化が原因だった」という体験談もSNSでは目立っています。

皆さんはWindowsの更新にどんなスタンスで臨んでいますか？

• すぐに更新する派
  
  
• 数日～数週間待って様子を見る派
  
  
• 企業や学校でまとめて検証してから導入する派
  
  

ぜひコメント欄で、あなたの体験や考えを共有してください。ユーザー同士の知見の交換が、不安解消と安全な運用につながるはずです。

今後の展望と安心への一歩

今回の件で改めて分かったのは、**「不具合の疑いがSNSで拡散するスピード」と「公式調査に時間がかかるギャップ」**が利用者の不安を増幅させるという現実です。

MicrosoftやSSDメーカーは、今後さらに迅速な情報公開と技術的解説を行うことが求められるでしょう。一方でユーザー側も、過剰に不安を抱かず、冷静に情報を取捨選択する姿勢が重要です。

Windowsアップデートは常にリスクと隣り合わせですが、それを完全に避けることはできません。だからこそ、確実なバックアップと情報共有が、安心して最新環境を利用するための最も有効な対策となります。

この記事が、同じような不安を抱える読者の参考になり、少しでも心を軽くする一助となれば幸いです。